侍女によって別室に通されたフランは、これから住まうことになる「花離宮」についての説明を受けた。

 だが、心の中では動揺が収まらず、すぐに上の空になってしまう。
 不意打ちで頬を叩かれたかのようなショックを、いまだ引きずっていた。

 冷遇されることは最初から予想していたけれど……思うよりも平和に暮らせたらという、前向きな気持ちもあったから。

 フランが努力することで双方の国にとって豊かな未来に繋がるのなら、皇帝と呼ばれる人がどんな人でも、精一杯お仕えしよう――そんな風にも考えていたのだ。

 相手の性格が悪くても、悪鬼のような見た目だったとしても、気にしないつもりだった。けれど実際は、眩しいほどハンサムな人で……ほんの少しだけ、高揚するものを感じてしまったのに。

(それなのに、あんなに冷たい目で見られるなんて……)