ずっと見ていたかったけれど、のぼせた上にすっかり体力も尽き、もう姿勢を保つのがやっとの状態になっていた。
 察したライズはフランを抱き上げて、ベッドまで運んでいった。
 フランを寝台に横たえた彼は、そのままベッドサイドに腰かけて、穏やかな口調で休息を取るよう命じる。

「今夜はもう休め」

 限界まで疲れきった体に、張りのある低い声が催眠術のように染みこんでいく。
 ライズはどうして、キスをしてくれたのだろう。シルビア姫という人が、いるはずなのに。
(なんで……)
 すごく幸せだったのに、急に胸が苦しくなってきた。これ以上、彼を好きになってしまったらどうすればいいのだろう。頭の中がひどく混乱している。

 涙が零れそうになり瞼を閉じれば、強烈な眠気が襲ってきた。
 せめておやすみなさいと目の前の人に伝えたかったけれど、大きな手で前髪を梳かれ、額を撫でられるともう抗えない。吸い込まれるように眠りの淵に引き込まれてしまうのだった。