「ライズ様。少しの間、じっとしていてくださいね」

 出過ぎた真似をしているかもしれないが、まだ離れるわけにはいかないと身を乗り出す。
 体を屈めて覗き込み、汚れたガーゼを取り除くと、生々しい傷痕が目に入る。傷口に触れないよう、患部にそっと手をかざした。そして目を瞑り、集中する。

「なにをするつもりだ?」

 興味津々な様子で、ライズが尋ねてきた。
 フランは念じる方向を保ちながら答えた。

「痛みを和らげて……傷の治りを早めることができると思います。自分が怪我したとき、こうして手を当てて思いを込めると、そうなるので……」
「ほう……」

 ライズは感心したように相槌を打つと、体の力を抜く。おとなしく身を任せてくれるようだ。
 フランは心を無にして、マナのコントロールに努めた。
 体温が上がる。体の中から湧き出す力を、手の平から外へ出す。そして、ライズの体の細胞に働きかけて、組織を活性化させ、再生を促す――。

「……。……。……ふぅ」

 しばらくして息をついたとき、めまいがしてうつむいてしまうくらいには、心身ともに疲れ切っていた。
 それでもすぐに顔を上げ、傷の具合を確認するべく行動に移る。傷口は明らかに塞がりかけ、良好になったように思えた。

「どうですか?」
「痛みが消えている。すごいな……」