楔のように打ち込まれたショックはまだ癒えておらず、花は色あせて見えるし、木々の合間で遊ぶ鳥のさえずりさえも渇いたものに聞こえてくる。
 好きな人のそばにいたいのに、叶わない。この切なさはこれからもずっと続くのかと思うと、辛くてたまらない。じくじくとした不安は増していくばかりだった。

 やっぱりもう戻ろうと決めてサリーにその旨を伝えると、彼女はそれ以上は踏み込まずに「わかりました」と頷いてくれた。
 来た道とは別の道を通って引き返しながら、ふと脇のほうを見上げると、丘の上に建つ小さな東屋が目に入った。
 自然に囲まれた休憩スペースはとても居心地がよさそうだが、日差し避けの屋根の下にいるふたりを見て、フランは呆然と立ち尽くした。

(ライズ様と、シルビア様……)

 うしろにいたサリーもそのことに気づき、慌てた様子で声をかけてくる。

「シルビア王女様はこの国にいらしたばかりですから、陛下が城内を案内して差し上げているだけだと思います!」

 必死の慰めにもろくに反応できずに、目を逸らしたい一心で足を動かし、その場を立ち去った。