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 シルビア姫の発言の意味を確かめる手段はなく、その日以降、ライズと関わる機会は途絶えてしまった。
 ひょんなことから拾い上げられ、一番近くにいられたのに、気づいたときには数合わせのように集められた寄せ花の一本に戻ってしまった……そんな状況だ。
 知らず深いため息が漏れてしまい、今はそばにサリーがいることを思い出して、しまったと後悔した。

「……フラン様。今日はお天気もいいですし、お庭を散歩でもなさいませんか?」

 と、優しい彼女がわざと明るく声をかけてくれる。晩餐会の日からしばらく塞ぎ込んでいたフランの異変を察しながらも、元気を取り戻させようと気を遣ってくれているのだ。

「そうね、今日の午後は予定もないし……外の空気を吸いに行こうかしら」

 気分転換になるかもしれないと、重い腰を上げた。


 サリーと連れ立ち離宮を出て、城の西側にある緑の庭園まで足を伸ばすことにする。
 散歩に適した西庭は、緑の絨毯に咲いた小花が季節ごとに表情を変え、いつ訪れても目を楽しませてくれる場所だ。
 ゆっくりと散策を進めていったが、どうにも景色を楽しむ気にはなれなかった。