「フラン。そのドレス、とてもよく似合っている。会場でも、愛らしく注目を集めていたから、すぐにわかったよ」
「えっ……。あ、ありがとうございます」

 愛らしいだなんて、一番褒められたかった人からの嬉しい言葉をもらい、自然と顔がほころぶ。
 照れながら視線を上げると、予想したよりも彼が近くにいた。びっくりして思わず身を引いたが、背中に柵が当たって、それ以上うしろに下がることはできない。

「なぜ逃げる? 久しぶりに会えたというのに」
「に、逃げているわけでは、ありませんが……」

 ライズは自然な仕草で距離を詰めると、フランを挟むようにして両手を柵についた。そしてそのまま、気遣わしげな視線を向けてくる。

「顔色が悪いようだが……体調は変わりないか?」

 ライズはそう言って首を傾げた。
 心配をかけているのがわかり、ぎゅっと胸が切なくなる。

「私は大丈夫です……。少し人に酔ってしまったので」

 するとふいに彼の手が動き、フランの頬に添えられた。
 手袋に包まれた親指が、確かめるように輪郭をなぞる。頬が赤く染まり、心臓までもがドキドキし始める。
 静かな夜、懐の中に囲われて、漂う空気はなんだか甘い。
 間近で見上げる彼の瞳は、星が瞬く宵闇の空のように美しく、気高かった。