「若い者同士、積もる話もあるでしょう。場所を移してお茶を飲みながら語り合ってはどうかしら。それと、今夜は歓迎の宴を開きましょう」

 家族のように親しげな雰囲気に、フランの胸は切なく締めつけられた。
 解散が告げられたあとも、臣下の面々はすぐには立ち去らず、その場に残って立ち話に花を咲かせていた。

「シルビア姫、なんと美しい女性なのだろう……。あの若さで、あの品格。容姿も気立てのよさも、文句のつけどころがない」
「本場の聖女様が出てくるなんて……。皇妃選びはもう決まったようなものね」

 出世の期待をかけて娘を離宮に送り込んでいた親世代の貴族だけでなく、ライバルである令嬢たちですら感心し、負けを認めたような表情を浮かべている。

(あんなステキな女性と比べたら……私なんて、とてもかなわないかもしれない……)

 すっかり空気にのまれたフランはがっくりと肩を落とし、謁見の間をあとにした。