そもそも、両親からたくさんの贈り物をもらっていた妹のマーガレットと違って、フランは装飾品のたぐいを、あまり持っていなかった。
国を出るとき、父王から言われた言葉を思い出す。
『よいか、フラン。我が国の命運は、おまえの肩にかかっている。もしも、万が一、奇想天外な奇跡でも起こって皇帝の寵愛を得られれば、我が国の権威は高まり、再独立も不可能ではない。だが逆に、皇帝の不興を買うことがあれば――おまえの首が飛ぶだけでなく、この国は滅ぼされ、この地には草一本、残らぬものと思え』
――皇帝の寵愛だなんて。マーガレットならいざ知らず、私には無理です、お父様……。
あのとき飲み込んだ言葉が、今になってますます真に迫ってくる。
気に入られるどころか、こんな出来損ないの王女を寄こして帝国をなめているのかと逆鱗に触れてしまったらどうしよう。そうならないよう振る舞わねばならないが、自信はない。
ぷるぷると震えているうちに、馬車は目的地に到着し、外から声をかけられた。
「フランベルジュ城の城門に到着いたしました。エントランスまではまだ距離があります。ここからは別の小型馬車に乗り換えていただきます」
(フラン……ベルジュ城? 私の名前と響きが似ているわ)
少し興味が生まれて、馬車の外へと足を踏みだす。
「…………!」
タラップを降りると、目の前には雄大な大自然の代わりに無骨な城壁が、その向こうには天を突くほど高く、壮大で優美な城が堂々とそびえ立っていた。
国を出るとき、父王から言われた言葉を思い出す。
『よいか、フラン。我が国の命運は、おまえの肩にかかっている。もしも、万が一、奇想天外な奇跡でも起こって皇帝の寵愛を得られれば、我が国の権威は高まり、再独立も不可能ではない。だが逆に、皇帝の不興を買うことがあれば――おまえの首が飛ぶだけでなく、この国は滅ぼされ、この地には草一本、残らぬものと思え』
――皇帝の寵愛だなんて。マーガレットならいざ知らず、私には無理です、お父様……。
あのとき飲み込んだ言葉が、今になってますます真に迫ってくる。
気に入られるどころか、こんな出来損ないの王女を寄こして帝国をなめているのかと逆鱗に触れてしまったらどうしよう。そうならないよう振る舞わねばならないが、自信はない。
ぷるぷると震えているうちに、馬車は目的地に到着し、外から声をかけられた。
「フランベルジュ城の城門に到着いたしました。エントランスまではまだ距離があります。ここからは別の小型馬車に乗り換えていただきます」
(フラン……ベルジュ城? 私の名前と響きが似ているわ)
少し興味が生まれて、馬車の外へと足を踏みだす。
「…………!」
タラップを降りると、目の前には雄大な大自然の代わりに無骨な城壁が、その向こうには天を突くほど高く、壮大で優美な城が堂々とそびえ立っていた。



