鼻だけど。獣スタイルだけど。キスを……されてしまった。

(きゃあ~~~~! キ、キスっ……、陛下の唇が触れてっ……。やわ、柔らかかっ……、そんな、陛下、気軽にそんなこと、よろしいのですか!?)

 でも当たったのは鼻のところだし、彼にとってはスキンシップか挨拶みたいなものかもしれない。だけど、でも――。
 頭がボンッと弾けた気がして、考えがまとまらない。
 口を開けたら心臓が飛び出しそうで声も発せずにいると、そのままぴったりと額と額をくっつけられて、極上の笑顔がとどめのように降ってきた。

「……フラン。今日は頑張ったな。褒美はなにがいい?」

 ご褒美。そんな耳に優しい言葉、祖国の誰からも言われたことはない。

(あぁ……陛下……)

 視界が潤む。どんぐり眼をこぼれるほど見開いて、心の中では快哉を叫んでいる。幸せがどんどん膨れあがって、風船のように破裂してしまいそうだ。

(陛下は私に、「初めて」をたくさん与えてくださっています……)

 属国から貢ぎ物として捧げられた自分だけれど、この運命に感謝せずにはいられない。
 降り積もった「好き」の感情は、もうとっくに振り切れて、溢れていた。