近年になってめきめきと勢力を拡大しているというヴォルカノ帝国。

 その海の玄関口ともいえる船着き場は、小さな島国であるシャムール王国など比べ物にならないほど賑わっていた。港には軍人ばかりでなく多くの商人や客が行き交っており、思っていたほど殺伐とした雰囲気は感じられない。

 乗り込んだ馬車の窓から、初めて見る大陸の景色を夢中で眺める。

 ――カタンコトン……カタンコトン……。

 車輪の音も静かな、平らで幅広の道路。
 両脇にはびっしりと並んだレンガ造りの建物。
 大きな商店に、荘厳な教会、噴水のある広場には色とりどりの花が生けられて。

 街道はすべて石畳で舗装されており、土の地面などは見当たらない。川ではなく人工の水路が引かれ、機能的かつ美観も損ねず、完璧に整えられている。
 歩いている人々も、誰もかれもがおしゃれに見えて、美しく優雅だ。自然を活かし、素朴な生活をしていた祖国とは、なにもかもが違う……。

 窓から顔を引っ込めたフランは、自分の装いを見直して、急に不安になった。
 手持ちのドレス、アクセサリーの中から、いちばん新しいものを選んで身に着けて、きれいにしてきたつもりだけれど――はっきり言って、地味だ。