(聖獣――私がそんな尊い響きの存在だなんて言われても、信じられないわ)

 獣毛の手触りを気に入っているらしいライズが、フランの耳から後頭部にかけてをゆっくりと撫でながら言った。

「大きな耳に、太陽を映したような金色の瞳。体の大きさは腕に収まるくらいだったというから、特徴的にも一致している。個体種名は、セイントマリアというらしい」

 猫とも狐ともつかない中途半端な格好だと思っていたが、個体種名があったとは。
 随分と大層な名前だなと思っていると、ふいに顎の下を指でくすぐられて、変な声が出た。

(はう……気持ちいい……。喉がゴロゴロ鳴っちゃう……)

 小動物を抱えたときの無意識の行動かもしれないが、集中できないからやめてほしいと本気で思う。今は真面目な話をしているというのに。

 そんな皇帝の挙動は、側近のクリムトにとっても珍しかったようで、見れば彼も目を丸くして、こちらのやりとりをまじまじと眺めているではないか。
 フランは気恥ずかしくなって、身をよじり振り返った。