城内は、フランの話題で持ち切りとなった。

「島国の出身のフラン王女が、皇妃に選ばれるのではないかという噂だ」
「先日来たばかりで? まさか、陛下のひと目惚れってこと……?」
「相当に入れ込んでおられて、皇妃の部屋に住まわせ、昼夜問わず一緒に過ごされているらしいぞ」

 噂に尾ひれがつき、純朴そうに見えて男を落とす悪女だとか、島国の怪しい呪術を使ったのではないか、などと邪推されたりもしているらしい。だがフランに変わった能力があることは、当たらずしも遠からずで――。

 フランの能力についてはクリムトが調査を進め、判明したことがいくつかあった。

 ――フランは、体内でマナを作り出すことができる。

 マナとは空気中に漂う魔力の素粒子で、魔法を使ったり獣人が変身したりする際のエネルギーとなるものだ。
 これは自然界だけが生み出す物質であり、人工で作り出すことは不可能。「あって当然」と思っていたものを浪費し続けた結果、今や枯渇してしまったマルスの天然資源である。