「朝礼と夕礼にも顔を出していないようだけれど、この皇太后の命令を無視するなんて、わたくしも侮られたものね」
「ち、違います! それは……」

 思わず「陛下が」と言いかけて、口ごもる。いくらライズの許可をとったこととはいえ、皇帝のせいにすることはできない。

「申し訳、ございません……」

 弱々しい謝罪の言葉しか出てこず、うつむいてしまう。すると、切り裂くような甲高い声が横から投げられた。

「皇太后様! この者は陛下をたぶらかす悪女です。追放してくださいませ!」

 鋭い目つきで睨みつけてくるのは、花離宮で権勢を振るっていたカーネリアとブルーネル、コーラルの三令嬢だ。

「この女は、離宮にいらした陛下の前で服を脱ぎ、誘惑したのです。王女どころか、令嬢としての品位の欠片もございません!」
「色仕掛けで近づくなど、なんてはしたないのかしら!」

 口々に罵声を浴びせられる。
 まさか獣化してドレスが脱げてしまったとは言えず、フランは言葉をなくした。
 たじろぎ視線を泳がせるうちに、場の空気はどんどん悪いほうへと流れていった。