今度はなにを、と思った矢先、大きな手の平によって顔の位置を固定され、耳にふぅっと息を吹きかけられた。

「~~~~~~~~!!」

 吐息にくすぐられ、ぞわぞわと全身の毛が逆立つような心地がして――。

 ――ぽんっ。

 フランは敗北した。

「フフフ。わかってきたぞ」
「……」

 勝ち誇ったように言う彼に抱き上げられて、ピンクの獣は恨めしげな視線を向けた。不敬だろうが構わない。少しくらい失礼な態度をとっても問題はないだろう。
 フランはひとつ確信していた。この国の皇帝が動物好きであることはもう間違いない。

「さぁ、いいものを持ってきたんだ」

 どこから取り出したのか、彼の手に握られているのは、しなる棒の先にふさふさがついた猫じゃらしだ。
 ライズは別人のようにステキな笑顔を浮かべている。

(陛下……私は猫ではありません)

 そう思っているのに、血が騒ぎ、体が疼いてしまうのはなぜなのか。
 目の端で、パタパタと動くものが……、あぁっ、勝手に身体が動いてしまう!

「どこを見ている? さぁ、こっちだ……。おっと、なかなかいい動きをするな」

 互いに遊び疲れて眠るまで、秘密の特訓(?)は続いたのだった。