普段シャープに引き締まっている彼の目元は、今は甘やかに細められて優しげだ。
 大きなベッドの上で、ライズとふたりきり。
 途端に状況が頭に入ってきて、顔にぶわっと血が上る。鼓動はドクドクうるさくて、頭の中は真っ白。気の利いた言葉も行動もとれやしない。
 すると彼の手がすっと伸びてきて、こちらの頬に添えられた。びくりと体を震わせる。
 今の今まで半信半疑だったが――彼は「乗り気」なのだと、フランは察した。サリーが言っていた「特別な夜」が幕を開けるのだ。

(ついに、この身を捧げるときがきたのね……)

 覚悟していたこととはいえ、未知への恐怖が上回っている。フランはベッドに横たわったまま、胸の前でぎゅっとこぶしを握った。
 ライズが身を乗り出し、フランの体の横に腕を突き立ててきた。沈んだマットレスがぎしりと音を立てる。ベッドの上で押し倒されている格好だ。
 彼の顔が、ゆっくりと下りてくる。

「準備はいいか……?」

 耳の近くで囁かれてぞわぞわする。ごくりと喉が鳴った。
 彼の顔が、さらに近づいて――フランは細かく震えながらも、こくりと頷いた。