気づいたとき、あたりにはなにもなくなっていた。心の中の不安を表すように、真っ暗な闇が広がっている。
 寂しくて、心が痛くて泣きたくなった――そのとき。

「――ラン。……フラン」

 欲しかった声を耳にして、フランはハッと目を開いた。
 白いシャツを身につけてリラックスした格好のライズが、ベッドの縁に腰かけ、シーツの上に片手をついて、こちらを覗き込んでいる。

「どうした? うなされていたようだが」
「も、申し訳ありませんっ。お待ち申し上げていたのですが、いつの間にか眠ってしまい……」

 目覚めの悪い夢だった。けれど夢でよかったと安堵する。ただ先に寝てしまったことを申し訳なく思い慌てていると、特に機嫌を損ねた様子もないライズが首を傾げた。

「私を待っていたのか?」
「は、はい……」
「そうか。実は私も、楽しみにしていた」
「……っ」

 どくん、と心臓が跳ね上がる。寝起きのぼんやりした頭が、一気に覚醒した。