「お蕎麦美味しかったですね、あやめ様」
結局、あやめ様に戻ってしまった、と思いながら、あやめは夜また現れた堀宮の話を聞いていた。
「蕎麦ってなんだ?」
カウンターの向こうにいる村正が訊いてくる。
彼は新たなカクテルのレシピを求め、タブレットを眺めているようだった。
あやめが昼間の話をすると、
「……なに俺抜きで盛り上がってるんだよ」
と村正の機嫌は悪くなったが。
いや、みんな、あなたの話題で盛り上がってましたよ、とあやめは思う。
「よし。
俺をのけ者にできないよう、俺の素晴らしいところを見せてやる。
あやめ。
『へい、ムラマサ。
私をイメージして一杯作って』と色っぽく言ってみろ」
……まず、色っぽくが無理ですね、とあやめが思ったとき、
「駄目ですよ」
と堀宮が止めてきた。



