そのタイミングで、

「そうだ、ユキコさん。
 これを日当たりのいい日陰とやらに置いてくれ」
と村正が小脇に抱えていた枯れかけた珈琲の木をユキコに渡す。

「枯れた木をもらってきたんだが。
 あやめが一生懸命蘇らせようとしてるんだ」

 まあ、なんて素敵な方、という目でユキコがあやめを見る。

 いや……、もらってきたのは、村正さんですし。

 すごい(こころざし)があって、育てているとかいうのではないのですが……。

 だが、ユキコが親しみを込めて微笑みかけてきてくれたので、あやめは、ごくりと唾を飲み込み、変色した木を見つめる。

 絶対に失敗できないっ。

 緊張するあやめとは対照的に、ユキコはニコニコしながら、
「さあさあ、お疲れでしょう。
 お夕食の準備ができてますから」
と二人を屋敷に通してくれた。