唯花…。

さっきの断った時の唯花は、雰囲気がいつもと全然違ってゾッとした。

しかも、“ならない”じゃなくて“なれない”。何かあるのか…?

「なにあの子!龍姫の誘いを断るってどういうこと⁇」

龍姫とは、希龍の姫のことだ。

「……。あんな子、会ったことないよ。」

いつも語尾がゆるい暁斗でさえ、動揺している。

「……。」

春希も驚いていたが、少し嬉しそうだ。

「ふっ」

「「「「!!!」」」」

漣斗がまた、笑った……。

「やっぱおもしろい女だな。ぜってぇ姫にしてやる。」

ああ、漣斗がやる気を出しちゃったよ…。

唯花、ご愁傷様。もう逃げられないよ。

「千紘。」

「はいはい。」

「捕まえろ。」

分かってるよ。漣斗のためにも…、自分のためにも。

その思いは秘めておく。僕も命が惜しいからね。

唯花、覚悟しろよ。



「あの瞳も、変えてやる……。」

漣斗が薄く笑いながら呟いた声は、僕にも、誰にも聞こえなかった…。

             千紘side end