井川なぎさは井川侯爵令嬢だった。18歳。
黒髪の腰まであるストレートロング。前髪も長かった。眉は太い。黒い瞳だった。大きい目をしていた。鼻筋が通っていた。広い額。美しかった。
黒髪黒瞳(こくはつこくどう)は人間ではあまりいなかった。黒髪黒瞳は魔族でもそんなにいなかった。
なぎさは幼いころから髪と目の色で不気味がられてきた。またなぎさは美しく、美しいが性格が、と揶揄されてきた。
またなぎさには妖精と話す能力があったので、さらに不気味がられた。妖精と話しているときは「不審者」と呼ぶものもいた。
また黒髪と黒い瞳で「魔族だ」とかいうものもいた。
またああいうやつは顔はいいが性格が、というものもいた。「お前があかんのは心」「ああいうやつは心がだめなんだ」「心のことを言っているんだ」などというものがいた。
しかし父親の侯爵はなぎさを溺愛した。
父侯爵はイケメン、イケオジであった。茶色い長い髪をしていた。きりっとした眉。切れ長な目、青い瞳。背が高く線は細いが、がっしりしていた。
そうしてなぎさはトバ国の王太子藤堂タイガに目を付けられ、婚約した。王太子は金髪(ブロンド)のセミロング、切れ長な目、蒼(あお)い瞳のミステリアスな美少年だった。鼻筋は通っていた。背は高かった。体格はよくスマートだった。王太子は「顔だけ」「かっこだけ」「あんな美少年が」とみんなに揶揄されていた。しかしなぎさは王太子が面白い男だと思っていた。
王太子は詩を送って来た。王太子は詩作するのだった。それを「あんな美少年」と揶揄されているのだった。
しかし、婚約破棄!こんな私は悪役令嬢!なぎさは、悪役令嬢のレッテルをはられた。ただでさえ、不気味がられ、「魔族」とさえ言われている。皆に色眼鏡で見られた。「性格最悪が」「性格わる」「心のワルが」「不審者」「お前がぶすなのは性格の方だ」「顔はいいが性格が」「心のことを言っているんだ」「心があかん」「中身がそなわっていない」と言われた。
信じられないことを言う人たちがいた。
「ペテン師」「生きているのがおかしいんだ」「生まれてこなければよかった」「生まれ変われ」「外へ出てくるな」「退治してやる」「あの中魔族が入ってる」「外に出てこなければよかったな」「出てくるな」「まっとうじゃない」「まともじゃない」
信じられない罵倒だった。信じられない人間だった。性格ぶすや、ほんとのぶすなどと罵倒する者どもだった。下品な言葉を投げかけるものがいた。
そうしてなぎさは魔王と婚約し、魔族の国ねのかたすくにに流されることとなった。
黒髪の腰まであるストレートロング。前髪も長かった。眉は太い。黒い瞳だった。大きい目をしていた。鼻筋が通っていた。広い額。美しかった。
黒髪黒瞳(こくはつこくどう)は人間ではあまりいなかった。黒髪黒瞳は魔族でもそんなにいなかった。
なぎさは幼いころから髪と目の色で不気味がられてきた。またなぎさは美しく、美しいが性格が、と揶揄されてきた。
またなぎさには妖精と話す能力があったので、さらに不気味がられた。妖精と話しているときは「不審者」と呼ぶものもいた。
また黒髪と黒い瞳で「魔族だ」とかいうものもいた。
またああいうやつは顔はいいが性格が、というものもいた。「お前があかんのは心」「ああいうやつは心がだめなんだ」「心のことを言っているんだ」などというものがいた。
しかし父親の侯爵はなぎさを溺愛した。
父侯爵はイケメン、イケオジであった。茶色い長い髪をしていた。きりっとした眉。切れ長な目、青い瞳。背が高く線は細いが、がっしりしていた。
そうしてなぎさはトバ国の王太子藤堂タイガに目を付けられ、婚約した。王太子は金髪(ブロンド)のセミロング、切れ長な目、蒼(あお)い瞳のミステリアスな美少年だった。鼻筋は通っていた。背は高かった。体格はよくスマートだった。王太子は「顔だけ」「かっこだけ」「あんな美少年が」とみんなに揶揄されていた。しかしなぎさは王太子が面白い男だと思っていた。
王太子は詩を送って来た。王太子は詩作するのだった。それを「あんな美少年」と揶揄されているのだった。
しかし、婚約破棄!こんな私は悪役令嬢!なぎさは、悪役令嬢のレッテルをはられた。ただでさえ、不気味がられ、「魔族」とさえ言われている。皆に色眼鏡で見られた。「性格最悪が」「性格わる」「心のワルが」「不審者」「お前がぶすなのは性格の方だ」「顔はいいが性格が」「心のことを言っているんだ」「心があかん」「中身がそなわっていない」と言われた。
信じられないことを言う人たちがいた。
「ペテン師」「生きているのがおかしいんだ」「生まれてこなければよかった」「生まれ変われ」「外へ出てくるな」「退治してやる」「あの中魔族が入ってる」「外に出てこなければよかったな」「出てくるな」「まっとうじゃない」「まともじゃない」
信じられない罵倒だった。信じられない人間だった。性格ぶすや、ほんとのぶすなどと罵倒する者どもだった。下品な言葉を投げかけるものがいた。
そうしてなぎさは魔王と婚約し、魔族の国ねのかたすくにに流されることとなった。


