井川なぎさは井川侯爵令嬢だった。黒髪のストレートロング。前髪も長かった。黒目だった。黒髪黒目は人間ではあまりいなかった。黒髪黒目は魔族(デモンズ)でもそんなにいなかった。
 なぎさは幼いころから髪と目の色で不気味がられてきた。「魔族だ」とかいうものもいた。しかし父親の侯爵はなぎさを溺愛した。そうしてトバ国の王太子に目を付けられ、婚約した。
 しかし、婚約破棄!こんな私は悪役令嬢!なぎさは、悪役令嬢のレッテルをはられた。ただでさえ、不気味がられ、「魔族」とさえ言われている。皆に色眼鏡で見られた。「性格最悪が」「性格わる」と言われた。
 信じられないことを言う人たちがいた。
 「ペテン師」「生きているのがおかしいんだ」「生まれてこなければよかった」「外へ出てくるな」「退治してやる」信じられない罵倒だった。信じられない人間だった。
 そうしてなぎさは魔王と婚約し、魔族の国ねのかたすくにに流されることとなった。