笑っていた千春さんがふと、悲しげに顔を伏せた。



「初めましてが病院なんかでごめんね。俺、ちょっと心臓の病気で入院中なんだ。発症したのは中学生くらいかな。そこから入退院を繰り返してて、手術とかも何度かしてるんだけどあまり良くならなくてね。今はもう、なるようになれって感じかな」


「そう、だったんですね…」


「なんとか治したいんだけどね。俺にはやりたいことがあるから」


「やりたいこと…?」


「梓を幸せにしてやりたいんだ。付き合い始めたのが中二からだから、もうすぐ十年になるな。…なのに梓にはいつも我慢ばかりさせて、遠出すら数えるくらいしかしてない。十年近く付き合ってるのにだよ?こんなの愛想つかれたっておかしくないよね」


「そんなこと…!」


「わかってる。梓はそんなこときっとしないだろうね。俺の前では決して泣かなくて強がってるけど、本当は誰よりも寂しい思いをさせてることだって知ってる。だからこそ、元気になって梓を世界で一番幸せにしたいんだ」



どうしてこんなに想い合っている二人が、辛い思いばかりしなきゃいけないんだろう。


もしも神様がいるなら、どうか千春さんを元気にしてください。



泣きそうになるのを堪えて願うことしか私にはできなかった。