この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編


「あの男にあんたらは騙されてるんだ。
あの顔と才能で世の中を見下して、俺ら凡人を馬鹿にして嘲笑ってるような奴だ。庇う必要の無い最低な人間なんだ。」

男がこれでもかと言うように蓮を罵り罵倒し始めるから、これにはさすがの龍二も怒りを覚え歩みを止める。

「貴方こそ、北條蓮の何を見てそんな暴言吐いてるんだ?何も知らないくせに、世間の噂に流されて勝手に妄想して、そんな奴に正しい記事なんて書ける訳が無い!」

「ああ、知らないね。
俺はアイツのせいで奈落の底に落とされた。アイツが媚びへつらって俺に頭下げるまで、記事を書く事を辞める気はない。見返してやるんだ。」

何を恨み何を妬んでいるのか分からない。
ただ、この男は蓮を逆恨みし陥れないと気が済まないと言う事だけは分かる。

「蓮はお前が思ってるようなヤツじゃない。
才能をひけらかしもしないし、あぐらをかいて居座ってるような所はこれっぽっちも無い。
アイツだって幸せになる権利がある。お前らみたいなハイエナに北條蓮を潰させはしない。」
龍二の思いが爆発する。

「あんた、アイツの何?
ただの客と店主じゃ無いな。」
男がそう言って、フルフェイスの中から目を光らす。

「そっちこそ先に名乗るべきじゃ無いか?
業務妨害に、ストーカー行為、後、暴言は言葉の暴力になる。さっきの発言は録音させてもらった。返して欲しけりゃなを名乗って、正々堂々取りに来な。」
龍二はそう捨てゼリフを吐いて、今度こそ店に戻って行った。

こんなに腹立たしい事はない。
蓮に伝えるべきか…?
龍二は苛立ちを隠しきれず、付けていたエプロンを叩き落とす。

怒りのまま蓮のいる個室に足を向ける。
…しかし。

廊下で足を止め深いため息を吐いて怒りを逃す。

今、蓮にとって夫婦水入らずの大切な時間だ。

蓮の幸せな時間を壊す権利は俺には無い…。
そう思い踏み止まり、厨房へと戻って行く。

しばらくして外の様子を伺うと、あの記者はさすがにこの場は離れたようで姿が見えなかった。

あいつの事は俺が暴いてやる。蓮に伝えるまでも無い。龍二はそう気を取り直し、知り合いの弁護士に電話をかける。