この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編

心菜は退院してもしばらく母乳を与える為、毎日同じ時間に通う事になった。

蓮は自宅から少し離れた産婦人科に通う心菜の為に、従兄弟の不動産社長、龍二に無理言って病院近くの空きマンションを、急きょ借りる事にした。

それに、週刊誌の記者に自宅を見つけられたからには、事件が解決するまで戻らない方が良いと判断したからでもある。

蓮はいつにも増して心菜に過保護になり、彼女が1人で外出する時は必ず着いて来る。

「心菜、今日から俺も一緒に病院に行くから。」
心菜よりも早く起き朝食を作りながら蓮は言う。

「蓮さんだって昨日まで忙しかったんだから、今日ぐらいはのんびりした方が良いよ。」
心菜は、昨夜の帰りが日付けを回っていた蓮を心配する。

「帰ったら心菜とのんびりするから、大丈夫だ。」
蓮は笑いながらそう言う。
日本に戻ってから忙しかった仕事もついにひと段落付き、今日から育休に入ったところだ。

午前中は2人で産婦人科に行き我が子に会う。
小さいながら元気に泣く赤ちゃんの名は、心と書いて(しん)と決まった。

だけど、結婚の事も子供の事も世間には隠したままだから、あまり公に堂々と2人で出歩く事もままならない。

唯一病院内だけはプライバシーが守られていて、他の妊婦に会う事もまず無いから、これから毎日一緒に産婦婦人科病院に通うつもりの蓮にとっては、まるで秘密のデートの様な気分になる。

「仲良が良いですね。」
心菜が心に母乳を与えていると、顔見知りになった助産師さんが、にこやかに声をかけてくる。

「今日から育休を取ってくれたので、一緒の時間が増えるです。」
心菜はつい嬉しくて話してしまう。

あっ、蓮さんのプライベートはあまり話さない方が良かったかも…
そう思った時には既に遅く、他の看護師さんも集まって来て、ワイワイと話に花が咲く。

「私、北條蓮さんのイメージが180度変わりました。もっと冷たくてツンツンしてる人だとばかり思ってたのに、いつも和かに挨拶してくれますし、何より嫁命って感じが伝わって来て理想の旦那様像です。」

1番若い看護師が目をキラキラして、心菜に熱弁してくるから、何て返して良いか分からず少し戸惑う。

「誤解されやすいですけど…
普段は穏やかで優しい人なんです。何で世間にあんなイメージがついちゃったのか…分からないんですけど…。」

他の看護師も口を挟んでくる。
「私、密かに蓮さんのファンだったんですけど、本当もっと好きになっちゃいました。今度ライブやったら絶対観に行きたいです。」

普段の蓮に会った人達はたちまち蓮を好きになる。当の本人は伺い知らぬところで、蓮の株は急上昇だ。

だけど、あまりキャーキャー言われる事は苦手そうだなぁと心菜は思いながら、蓮が待つ待合室に心の保育器と共に向かう。