「…ごめんなさい。お腹、空いたよね。
夕飯の準備しなくちゃ…。」

ひとしきり泣いて気持ちが落ち着いた心菜は、濡れた頬を拭いながら真っ赤な目で俺を見上げてくるから、俺は笑い頬にキスを落とす。

すると、真っ赤になって俯いてしまうから、愛おしさが込み上げて少し強引に顎に指を置き、煽り向かせて唇を奪う。

「…っん……。」

これまで悪阻で苦しんでいた心菜を思って深い口付けは避けてきたけれど、奪ってしまったが最後、歯止めが効かなくなり唇を割って舌で口内を蹂躙する。

小さな舌を探り当て、絡めて吸い付き本能の導くままに流される。

「…っん…っあ……。」

堪らず吐息が漏れ出る心菜に煽られ容赦なく攻めたててしまう。

自分の熱に侵されながら制御不可能になった俺は、もっともっとと求め、息が乱れても貪る様なキスを止められない。

「……っや……っん…っん。」
心菜の身体がビクビクっと揺れて、倒れ込みそうになるところを寸でに抱き止めハッと我に帰る。

「…ごめん、やりすぎた。」
やっと解放し、俺は小さくそう呟く。

息も絶え絶えの心菜は瞳を潤ませながら、唇を尖らせ目で抗議する。

そんな可愛い唇が名残り惜しくなり、親指でそっと拭う。

心配なのはお腹の子の事。

余り刺激するのは良くないと、よしよしと慰めるようにお腹を撫ぜる。
すると、中からぽこぽこと蹴られたような感触を感じ、俺は驚き手を止め目を見開く。

「…今、動いたか⁉︎…中から蹴られた気がするんだけど…。」
信じられない気持ちでもう一度お腹を撫で回す。

「ちょっ、ちょっと蓮さん、恥ずかしい…。」

心菜はぽっこりとしたお腹を直に触られ恥ずかしくなったのか、両手でぎゅっと俺の手を握り拒ばまれてしまう。。

するとまた、ぽこっぽこっと中から微かに振動が手に伝わる。

「……あっ。動いたかも…。」
心菜も驚きそっと自分のお腹を撫ぜ始める。

2人一緒に初めて胎動を感じ、お腹の子が元気に育っている事に感動する。

「蓮さん…赤ちゃん…動いてる。」

「ああ、凄いな。腹の中から俺に抗議してるんだきっと。」
俺も愛おしさが込み上げて、しばらくお腹に手を当てて、初めて感じる我が子との触れ合いを堪能する。

すると今度は心菜のお腹がぐう〜っと鳴るから、思わずハハッと笑って手を離す。

乱れた服をサッと元通りに直し、
「ごめん、腹減ったよな。俺が何か作るから。」
と笑顔と共に立ち上がる。

心菜は両手で真っ赤になった顔を隠す。

「良かった、2人とも元気で。」
俺はチュッと額にキスを落とし、軽快な足取りでキッチンへと向かった。