心菜の希望の全てを叶えさせてあげたい。

出産ギリギリまでこっちで働きたいと望むなら、俺は最大限そのサポートをしたいと思う。

少しぐらい日本との行き来が大変だったとしても、そのくらい大した事は無い。

そうとなればLAでも治安が比較的良い、出来れば病院に通いやすい場所で、住居を探さなくてはいけない。

俺は彼女の手をそっと握り、頭をフル回転させる。

「心菜、今日から住む場所が決まるまで、俺もここで一緒に暮らしても良いか?」

そう唐突に伝えれば、彼女から戸惑ったような目線を感じる。

頬を優しく撫ぜながら、俺は目で大丈夫だ伝える。

「…蓮さんは今どこに泊まってるの?
ここにはジムもプールも無いし…お風呂も無いし、2人だと狭くない?」

そんな事を心配していたのかと、俺は思わずフッと笑う。

「心菜がいれば何も要らない。
出来る限り早く籍を入れたい。遅くてもこの子が生まれて来るまでには、ちゃんと居場所を整えてあげたいんだ。」

そっと彼女のお腹に手を当てて撫ぜる。
少しだけ膨らんだお腹に愛おしさが溢れ出す。

「どっちで産みたい?」
彼女の希望を聞く。

「産む時は、出来れば日本で…。」
遠慮がちに彼女が見てくる。

「分かった。心菜の希望は全て叶えたい。
遠慮しないでどうしたいか教えてくれ。」
こくんと頷く仕草が可愛い。

ああ、今すぐ押し倒したい…。
欲望の狭間で葛藤する。彼女は妊婦だ手は出せない。

やっと心菜を取り戻したのに、これからしばらく我慢と忍耐の日々だ。

お腹に当てていた手に彼女がそっと手を重ねてくる。

「これから、よろしくお願いします。」
そう言ってくれるから、どれだけホッとした事か…。

「ああ、こちらこそ。」

俺は堪らず彼女を抱きしめ、本当に良かったと心が震えた。