そんなことを考えていると、店内に彼女が現れた。今日はひとりのようで、レジスタッフからのオーダーを受けてドリンクを作る。


カフェモカのミルクを無脂肪ミルクに変更するというカスタムで、私は手早く作業を進め、「カフェモカのお客様」と声をかけた。


「お待たせいたしました」

「ありがとう」

「ありがとうございます。またのご来店を――」

「あの、少しお伺いしてもいいかしら?」


私の言葉を遮った馬場園さんに、一瞬ためらいつつも「はい」と笑みを浮かべる。


「勘違いなら申し訳ないんだけど、樹くん……香坂くんとは知り合い?」


てっきり商品のことでも尋ねられるのかと思ったけれど、その内容は予想外のことだった。


「えっ……?」


目を見開いた私に、彼女が艶のある口紅を乗せた唇を開く。

「気のせいかなって思ってたんだけど、ここに来ると香坂くんはあなたのことを目で追ってる気がして。それに、あなたの前だと、彼は普段とは違う雰囲気になるような感じがするから」


それがどういう意味なのか、私にはよくわからなかった