「…」




ぽかんと口を開けて見つめていると、男の人はこっちに顔を向けた。

フードから覗いている口元は、口角がほんの少し下がっていて、顎のラインがシャープで。

整った容姿をしている気配(けはい)が、ほんのり(ただよ)ってくる。


まさかあの人、ただの男の人じゃなくて…。

女性をドキドキさせるあまり、社会不全になる争いを引き起こすと噂の、イケメンさん…!?




「…可愛い女って、いるんだな」


「え…?」




男の人は、多分わたしを見ながら、低い声で独り言を言うように呟いた。

気付いたらわたしの胸はドキッとしていて、やっぱり犯罪者さんなんだ…!と身構える。


男女比が1:9と言われている現代で、男の人は貴重な存在。

それでも問答無用で捕まってしまうのが、イケメンさん。

生きながらにわたし達を虜にしてしまうイケメンさんは、かつて数多くの女性に争奪戦を()り広げさせてしまって…。