もぞもぞ身動ぎしたら弥斗さんに小声で注意されて、緊張しながら固まった。
カツカツというヒールの足音とお話し声が遠ざかって聞こえなくなると、ようやく、ふぅ、と脱力できる。
「さて、行くか」
「…弥斗さん、こうやってお巡りさんから逃げてきたんですね…」
「…まぁ。1人のときは人目につかない屋上使うけど」
「屋上?」
「建物が密集してるとこは飛び移れるんだ。屋上から屋上に」
「えぇっ」
そういえば、出会ったときも屋上から飛び降りてきたんだっけ…。
弥斗さんってもの凄く運動できるよね?
感心しつつ、立ち上がって再び歩きながら、ぱくぱくとパンを食べる。
弥斗さんに繋がれた手をぎゅっと握り返しながら、それにしても、と溜息を吐いた。
「いつまでこうやって、こそこそして逃げなきゃいけないんでしょう…」
「…疲れたか?」