ウゥーン…

 ウゥーン…




遠くから聞こえるサイレンの音に、体をぎゅっと縮めながら看板の裏に隠れる。

(まわ)りさんの前から逃げ出して、もう2日目。

野宿というものも、初めてした。




カランコロン


詩伊(しい)


「あ、弥斗(やと)さん…」




後ろから弥斗さんの声がして振り返ると、後ろ手にお店の扉を閉めているところだった。

手にはビニール袋を持っている。




「大丈夫でしたか?」


「あぁ。パン、貰ってきた。もう何年も前に出所した人だから、簡単には嗅ぎつけられないだろ」




弥斗さんはビニール袋を持ち上げて、立ち上がったわたしにロールパンを手渡す。

お腹はぺこぺこだったから、遠慮なく受け取って弥斗さんと一緒に食べた。