諦めの悪いやつ。

ここまでするってことはよほどの用があるんだろうな…まぁ、詩伊のためだと思って出てやるか。


俺は詩伊を起こさないように腕を引き抜いて、ベッドから出た。

行きずりにパーカーを掴んで羽織(はお)ると、フードを深く被ってポッケに入れておいたマスクをつける。





ガチャ


「何か?」


「え…」




玄関の扉を開けた先にいたのは、化粧をした茶髪の女。

20後半くらいか。


目を丸くした女を見て、さっさと用件を言えよ、と舌打ちを(こら)えていると、「きゃぁぁぁぁあ!」と叫び出した。




「不審者!泥棒!人の家で何してんのよ!詩伊は――むぐっ!」


「チッ…」




面倒な…。


女を中に引き込んで、扉に押し付けるように口を塞ぐ。

さてこいつをどうするか、と考えていると、ドタドタッと慌ただしい物音がした。