「……お花、ありがとうございます」

「なんだ、今日は大人しいな」

「え、」

「何しにきたんだとか、離せとか暴言吐かないのか?」

「ぼ、暴言なんて、いつも吐いてません!」




私の心配なんてお構いなしに、白い息を吐きながら「そうか?」とからかうように小さく笑う佐倉さん。

手を引かれながらそんな彼の背中を追う。

いつも通りな佐倉さんに、あれ?と思いながらもその背中に言葉を投げた。




「手、冷たいです」

「冬だからな」




あ、あしらわれた。
私の問いは抑揚なくかわされる。そういうことじゃなくて。




「いつから、待ってたんですか……?」




再び問えば少しの間のあとこちらに振り向き、眉尻を下げてふわりと笑うから不意打ちのそれにぎゅっと胸が掴まれた。

反則だ、そんなの。
久しぶりの佐倉さんの顔面の破壊力に圧倒された。




「んー、いつからだろう」




あ、真面目に答える気ないなと思いつつ佐倉さんの回答を待つ。

前に向き直りぎゅっと私の手を強く握った佐倉さん。
その手が本当に冷たくて、佐倉さんの手なのに、違う。

温めなければと思い、答えるようにきゅっと握り返してみる。


すると佐倉さんは再び振り返り、少し驚いたような表情をみせて、けれどどことなく嬉しそうにさらに強く握り返してきた。