クララは自分があられもない格好で洗濯をしているとは、少しも思っていないようだ。こちらが驚いているのにも気づかず、話しながら足踏みを続けている。
アドルディオンは動揺を悟られまいとしてすまし顔をキープし、視線をブドウ農園に戻した。心なしか頬が熱い。
(まだ小さいから……いや、もう九歳だ。貴族なら婚約する娘もいる。クララは純朴すぎる)
夜になると母親が酒場へ仕事に出かけ、またクララとふたりきりの時間が訪れた。
「アド、今夜も教えて!」
「いいよ」
細々と燃えるランプの明かりの中、食卓テーブルに向かい合う。
農園主からもらったという表紙が汚れた未使用の台帳に簡単な数式を書いた。
「昨日、教えたものは覚えている?」
「うん。ひと桁の足し算は大丈夫よ。今日は二桁なのね。十七に四を足したら、ええと……」
「十と七に分けて考えるんだ」
学校に通えないクララの学力は、ひと桁の数字が読めて自分の名前がなんとか書ける程度だった。
それで昨夜、読み書きと算数を教えてあげたら喜んでくれた。
今も小さな手で指を折りながら計算し、正解にたどり着くと目を輝かせた。
「できた!」
教えたことはすぐに飲み込み、類似問題を自分で解ける。学校に通えるなら、きっと優秀な成績を収めるだろう。
「クララは賢いな」
アドルディオンは動揺を悟られまいとしてすまし顔をキープし、視線をブドウ農園に戻した。心なしか頬が熱い。
(まだ小さいから……いや、もう九歳だ。貴族なら婚約する娘もいる。クララは純朴すぎる)
夜になると母親が酒場へ仕事に出かけ、またクララとふたりきりの時間が訪れた。
「アド、今夜も教えて!」
「いいよ」
細々と燃えるランプの明かりの中、食卓テーブルに向かい合う。
農園主からもらったという表紙が汚れた未使用の台帳に簡単な数式を書いた。
「昨日、教えたものは覚えている?」
「うん。ひと桁の足し算は大丈夫よ。今日は二桁なのね。十七に四を足したら、ええと……」
「十と七に分けて考えるんだ」
学校に通えないクララの学力は、ひと桁の数字が読めて自分の名前がなんとか書ける程度だった。
それで昨夜、読み書きと算数を教えてあげたら喜んでくれた。
今も小さな手で指を折りながら計算し、正解にたどり着くと目を輝かせた。
「できた!」
教えたことはすぐに飲み込み、類似問題を自分で解ける。学校に通えるなら、きっと優秀な成績を収めるだろう。
「クララは賢いな」



