けれども実家は貧しく迷惑をかけられない。それでクレアはひとりで子供を産んで育てようと決意し、妊娠中から働かせてくれる場所を探して辺境の海辺にたどり着いたのだ。
村人には親切にしてもらえたが、娘とふたりで生きていくのは楽ではない。
朝から晩まで働き詰めでついに体を壊した母に、パトリシアは申し訳なさを感じている。
なんとかして母を救いたかったが村医者には王都の病院でしか治療できないと言われ、多額の治療費を工面できずに途方に暮れていた。
そんな時に突然、父だと名乗るクラム伯爵が現れた。
『お前を心配してクレアが手紙を寄越したのだ。一緒に来なさい。私の娘として貴族教育を受けさせる』
『お父さんありがとう。でも私はこの村で暮らします。仕事もあるし、ひとりでも大丈夫よ。お母さんだけ王都に連れていって治療をお願いします』
『勘違いするな。お前のために言ったのではない。私の娘として必要な教養を身に着けたのち、我が家の役に立つ結婚をさせる。妻には娘が生まれなかったのでな』
『そんな! 私は貴族になりたくないし、結婚なんて――』
『言うことを聞けないのであれば、クレアの入院治療費は出さないぞ』
父に従うしか選択肢はなく、悔しさをグッと押し込めて生まれ育った辺境の村に別れを告げたのだ。
(政略結婚は嫌だけど、お母さんが元気になってくれるならどんなことにも耐えられる)
村人には親切にしてもらえたが、娘とふたりで生きていくのは楽ではない。
朝から晩まで働き詰めでついに体を壊した母に、パトリシアは申し訳なさを感じている。
なんとかして母を救いたかったが村医者には王都の病院でしか治療できないと言われ、多額の治療費を工面できずに途方に暮れていた。
そんな時に突然、父だと名乗るクラム伯爵が現れた。
『お前を心配してクレアが手紙を寄越したのだ。一緒に来なさい。私の娘として貴族教育を受けさせる』
『お父さんありがとう。でも私はこの村で暮らします。仕事もあるし、ひとりでも大丈夫よ。お母さんだけ王都に連れていって治療をお願いします』
『勘違いするな。お前のために言ったのではない。私の娘として必要な教養を身に着けたのち、我が家の役に立つ結婚をさせる。妻には娘が生まれなかったのでな』
『そんな! 私は貴族になりたくないし、結婚なんて――』
『言うことを聞けないのであれば、クレアの入院治療費は出さないぞ』
父に従うしか選択肢はなく、悔しさをグッと押し込めて生まれ育った辺境の村に別れを告げたのだ。
(政略結婚は嫌だけど、お母さんが元気になってくれるならどんなことにも耐えられる)



