不当な収益を上げていないか、政府が取り決めた税率を守っているか、領民の暮らしぶりは申告書に記載されている通りかなどを確かめたい。密かに武器を蓄え、戦乱を起こす準備をしていないかも見定める。
アドルディオンにとって初めての大きな任務だ。父に力量を試されている気がして、なんとしても成果を上げなければと意気込んで出発した。
護衛や政府の官人たち三十人を連れ、辺境伯領に入ったのは王都を出て二日後だ。
木綿のシャツに素朴なベストを着て、民間人の旅人を装っている。
集団だと目立ってしまうため、四つの小隊に別れて調査した。
十日かけて領主の館のある町と村をふたつ視察し、三つ目の海辺の村へ移動した。
青空の下、海風を感じながら漁港を目指して馬を進める。一面に広がる緑豊かな小麦畑の間のなだらかな坂道を下っていった。
(農産物と海の幸に恵まれ、村人の暮らしは豊かだろうと思ったが、壊れそうな家に住んでいる。農作業をしている民も粗末な身なりをしているな)
村民の収益に対し、ケドラー辺境伯が過剰に課税しているのではないかと疑った。
しかし隣から呑気な声をかけられる。
「視察に入ってから晴天続きですな。殿下の日頃の行いの賜物でしょう。しかしこう暖かいと、眠気が差して困ります。代わり映えしない、つまらん景色でございますし」
馬を並べているのはハイゼン公爵である。
アドルディオンにとって初めての大きな任務だ。父に力量を試されている気がして、なんとしても成果を上げなければと意気込んで出発した。
護衛や政府の官人たち三十人を連れ、辺境伯領に入ったのは王都を出て二日後だ。
木綿のシャツに素朴なベストを着て、民間人の旅人を装っている。
集団だと目立ってしまうため、四つの小隊に別れて調査した。
十日かけて領主の館のある町と村をふたつ視察し、三つ目の海辺の村へ移動した。
青空の下、海風を感じながら漁港を目指して馬を進める。一面に広がる緑豊かな小麦畑の間のなだらかな坂道を下っていった。
(農産物と海の幸に恵まれ、村人の暮らしは豊かだろうと思ったが、壊れそうな家に住んでいる。農作業をしている民も粗末な身なりをしているな)
村民の収益に対し、ケドラー辺境伯が過剰に課税しているのではないかと疑った。
しかし隣から呑気な声をかけられる。
「視察に入ってから晴天続きですな。殿下の日頃の行いの賜物でしょう。しかしこう暖かいと、眠気が差して困ります。代わり映えしない、つまらん景色でございますし」
馬を並べているのはハイゼン公爵である。



