まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

「事情はわかりましたけど、パトリシア様が木に登ってはいけません。庭師を呼んできます」

「処分されてしまうからダメなの。キツツキは厄介者なんですって。だから私がやるしかないのよ」

「いけません」

「大丈夫。子供の頃から木登りは大得意よ」

「そういう意味だけで心配しているわけでは――あっ、パトリシア様!」

 頭上では親鳥がしきりに鳴いて飛び回っており、早く安心させてあげたくてパトリシアは素早くはしごを上った。

 はしごの長さは二メートルほど足りず、そこから先は枝を渡るようにして上へと進む。

 太さの足りない折れそうな枝まで登ると爪先立ち、片手にそっと掴んだ雛を限界まで腕を伸ばして巣の中へ押し込んだ。

(戻せた!)

 下でハラハラしているエイミに笑顔で手を振り、一メートル下の太い枝まで下りた。


 すると親鳥が巣穴を確認しに飛んできて、餌をもらえると勘違いした三羽の雛が競うように顔を出し鳴き立てる。

「もう、食いしん坊ね。そんなに身を乗り出したらまた落ちちゃうわよ。気をつけて」

 雛を笑った、その時――。

「なにをしているんだ!」

 驚いているような男性の声がして、パトリシアは肩を揺らした。

 下を見るとエイミの斜め後ろにアドルディオンが立っていた。