話し好きな人なので小一時間ほど、ほとんど叔母が話し、パトリシアは聞かれたことについて答えるだけでいいからかもしれない。
(ボロを出さないようにと緊張するから、謁見は苦手よ。慣れなくてはいけないとは思うけど。もうしばらくは毎日でも叔母様に来てほしい)
叔母も読書は好きなのだそうで、バルコニーで読んでいた本に興味を持たれた。
「王家の歴史と伝統文化に関する本です」
花嫁に選ばれてから結婚式までの五か月ほど王城に通って王太子妃教育を受けたが、学びが足りない気がしている。
それで王城の図書室から借りてきた本を読み漁っていた。
その知識が生かされる機会がなかったとしても、勉強していると身を守る盾が分厚くなる気がして安心する。
「あなたは真面目ですのね」
呆れたように言った叔母が、バッグの中から青い革表紙の本を取り出した。
「王太子妃に必要な知識なんか、わざわざ勉強しなくても自然と覚えるものですわ。お読みになるならこういうものになさいませ。市井で流行っているそうですから、民の気持ちにも寄り添える一冊ですわ」
テーブルの上に置かれた本を手に取り、表紙を読む。
「禁断の蜜月回顧録?」
タイトルから内容が想像できず首を傾げたら、叔母の目が意味ありげに弧を描いた。
「どうぞお開きになって」
「はい」
(ボロを出さないようにと緊張するから、謁見は苦手よ。慣れなくてはいけないとは思うけど。もうしばらくは毎日でも叔母様に来てほしい)
叔母も読書は好きなのだそうで、バルコニーで読んでいた本に興味を持たれた。
「王家の歴史と伝統文化に関する本です」
花嫁に選ばれてから結婚式までの五か月ほど王城に通って王太子妃教育を受けたが、学びが足りない気がしている。
それで王城の図書室から借りてきた本を読み漁っていた。
その知識が生かされる機会がなかったとしても、勉強していると身を守る盾が分厚くなる気がして安心する。
「あなたは真面目ですのね」
呆れたように言った叔母が、バッグの中から青い革表紙の本を取り出した。
「王太子妃に必要な知識なんか、わざわざ勉強しなくても自然と覚えるものですわ。お読みになるならこういうものになさいませ。市井で流行っているそうですから、民の気持ちにも寄り添える一冊ですわ」
テーブルの上に置かれた本を手に取り、表紙を読む。
「禁断の蜜月回顧録?」
タイトルから内容が想像できず首を傾げたら、叔母の目が意味ありげに弧を描いた。
「どうぞお開きになって」
「はい」



