コーンスープの表面には生クリームが円を描き、刻みパセリがふりかけられ、色のコントラストがきれいだ。

 ロールパンは焼き立てでいい香りがするし、高脚の銀の深鉢に山と盛られたフルーツは、これが食べたいと言えばそばに控えているコックがすぐに切ってくれる。

「たくさんあるわね。エイミも一緒にいただきましょう」

 ここにはパトリシアの分しか朝食が用意されていない。

 侍女の食事は主人の後というのが普通らしいが、皿とフォークをもらえれば取り分けて食べられる。

 エイミがお腹を空かせて待たなくていいだろうと思い誘ってみたのだが、諫めるような真顔を向けられた。

「王太子妃殿下」

「一緒はダメ?」

「前に申し上げたはずです」

 五日前の離宮での最初の食事の時にもエイミを誘い、こう言われた。

『ふたりきりの時に話し相手として侍女をお茶の席に座らせるのはアリだと思いますけど、食事はナシです。使用人たちにおかしいと思われます』

 最低限の公務や謁見の務めを果たせば、後は自由にしていいとアドルディオンから言われている。

 しかしエイミと一緒に食事をする自由はないようで、肩を落とした。

(仕方ないわよね。勝手な振る舞いをした結果、本当に貴族なのかと疑われたら困るもの)

 諦めて着席した後は侍女と給仕係が控える中で、もそもそと食事をする。