しかしメインイベントの王太子妃の発表がまだなので、食べていない料理に心を残したまますぐに終了とはならないはずである。
近くの壁際には休憩のための椅子が十脚並べられており、端の席が空いたので腰かけてひと休みした。
隣にはパトリシアと同年代に見える女性がいて、その横に座る青年貴族にしきりに話しかけられている。
「今宵の出会いは運命だ。美しいあなたを私の両親もきっと気に入ることでしょう。我が家の晩餐にぜひご招待したい」
「ありがとうございます。ですが、父に聞いてみなければ、まだなんともお返事できません」
「では招待状をお送りして返事を待ちましょう。晩餐会はそれでいいですが、あなたのお気持ちだけ今、聞かせていただきたい」
強気に迫る青年貴族に、純情そうな令嬢が眉尻を下げて頬を染めていた。
他人の恋愛事を覗き見ている気分で、パトリシアまで顔が熱くなる。
(聞かない方がいいと思うけど、座ったばかりで席を立つのは不自然。どうしよう)
「私の気持ち、ですか?」
困ったように隣の令嬢が言い、視線をダンスホールの中央に向けた。
三十組ほどの男女がワルツを踊っていて王太子の姿もある。
相手は見知らぬ令嬢で、彼はほとんど休みなく三時間ほど踊り続けているようだ。
疲れているだろうに、それを少しも感じさせない優雅なステップに感心した。
近くの壁際には休憩のための椅子が十脚並べられており、端の席が空いたので腰かけてひと休みした。
隣にはパトリシアと同年代に見える女性がいて、その横に座る青年貴族にしきりに話しかけられている。
「今宵の出会いは運命だ。美しいあなたを私の両親もきっと気に入ることでしょう。我が家の晩餐にぜひご招待したい」
「ありがとうございます。ですが、父に聞いてみなければ、まだなんともお返事できません」
「では招待状をお送りして返事を待ちましょう。晩餐会はそれでいいですが、あなたのお気持ちだけ今、聞かせていただきたい」
強気に迫る青年貴族に、純情そうな令嬢が眉尻を下げて頬を染めていた。
他人の恋愛事を覗き見ている気分で、パトリシアまで顔が熱くなる。
(聞かない方がいいと思うけど、座ったばかりで席を立つのは不自然。どうしよう)
「私の気持ち、ですか?」
困ったように隣の令嬢が言い、視線をダンスホールの中央に向けた。
三十組ほどの男女がワルツを踊っていて王太子の姿もある。
相手は見知らぬ令嬢で、彼はほとんど休みなく三時間ほど踊り続けているようだ。
疲れているだろうに、それを少しも感じさせない優雅なステップに感心した。



