まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 両腕を広げたアドルディオンに「おいで」と呼びかけられ、胸を高鳴らせて隣に座ると肩を抱き寄せられた。

 頼りがいのある彼の腕の中は安心できるはずなのに、恋心のせいで落ち着かない。

「忙しい時期は終わったの? 母のお見舞いにも行ってくれたと聞いたわ」

「そうだな。遅くなったがやっと会えた。クララを妻に迎えておきながら今まで挨拶もしなかった非礼と、君を危険な目に遭わせた過去を詫びてきた。許してもらえたよ」

「母は怒らないわ。私が幸せな結婚ができてよかったって喜んでいるもの」

 ミモザの花がかぶったことを教えると、穏やかな笑い声が重なった。

(楽しい……!)

 こんな時にはお茶とお菓子が必要だと思い、立ち上がろうとする。

「少し待っていて。残りもので悪いけどお見舞い用に焼いたアップルパイがあるの。ハーブティーと一緒に持ってくるわ」

 しかし手を握られて行かせてもらえない。なぜか真剣な目をする夫に首を傾げた。

「それは明日の休憩時間に食べよう。君の手料理は明るい話題の時に口にしたい」

 そう言うということは、なにか深刻な話があるのだろう。

 浮かせた腰をソファに戻し、真顔で頷くと、彼が静かな口調で話しだす。

「襲撃事件の裁判が夕方、結審した。ケドラーとハイゼン、両者の判決は明日の午前中に下される。それでやっとあの事件に終止符を打てる」