まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

「ど、どうして!?」

 王都にいれば豊かに暮らせるというのに、なぜ貧しい村に戻ろうとするのだろう。

 生けようとしていたミモザを落としてしまうと、茶葉の容器を置いた母が拾って渡してくれた。

 その笑みは凛として、強い信念がにじんでいる。

 村にいた時の母は、いつもそのような顔をしていたと思い出した。

「お母さんは村で生きたいの。あなたならわかるでしょ?」

「うん……」

 アドルディオンに恋をする前は、クララも帰りたいと思っていた。

 心が洗われるような美しい自然と親しい村人たち。重労働の中に笑顔があふれていて、王都にはない幸せがある。

 村で暮らしたいという母の気持ちは痛いほどわかったが、簡単には会えない距離が寂しかった。

 これまで病に伏す母を支えてきたつもりでいたのに、どうやら逆だったようだ。

(そばにいてくれないと心細くて……)

 泣きそうになったら、子供の頃によくしてくれたように抱きしめられた。

「お母さんがいなくても大丈夫。クララには愛してくれる人がいるでしょう?」

 母が指さしたのはキャビネットの上の花瓶だ。

「あのミモザはお昼前に王太子殿下が持ってきてくださったのよ。同じお花を選ぶなんて、心が繋がっているようね」

「アドが?」

 今日は一緒に朝食をとったけれど、そんな予定は聞いていない。