まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 あの女性の誤解の出所がわかった気がして苦笑した。

 籠の中の花束に気づいた母が目を細める。

「ミモザを持ってきてくれたの。かぶったようね」

 母の視線の先にはキャビネットがあり、その上に花瓶が置かれ、すでにミモザの花が生けてあった。

「それ、どうしたの?」

 薄情な父は一度も母に会いにきたことはなく、自分の他に見舞う人も思いつかない。

 フフッと笑っただけで答えない母が、立ち上がってティーポットを手に取った。

 娘のために紅茶を淹れてくれながら、吉報を教えてくれる。

「今朝の回診で、退院が見えてきましたねってお医者様に言われたのよ」

 入院時に比べたら母の顔色は随分とよくなり、頬はふっくらとして元気そうだ。

「本当!? よかったー!」

 その言葉をどんなに待っていたことか。退院後の暮らしに夢が膨らむ。

「お母さんのお部屋はどこにしようかな。アドに相談してお部屋を整えるわ。お城はすごいのよ。大きな温室があって一年中花が咲いているし、画廊のような長い廊下に、ブドウ畑にできそうなくらい広いダンスホール。私専用の調理場もあるのよ。退院したら一緒に料理を作ろうね」

 当然、大邸宅で一緒に暮らすと思い言ったのだが、笑顔の母に首を横に振られた。

「お母さんはサンターニュのもといた家に帰るわ。生活援助はいらないわよ。元気になったから働けるもの」