まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

「もう、お母さんは心配性ね。これくらい平気よ。おじいちゃんのお見舞いには私が行きたいの。初孫の誕生を楽しみにしているから、お腹を撫でれば早く元気になろうと思うでしょ」

 どうやら入院中の男性に会いに来た娘と孫娘のようで、孫娘は妊娠しているようだ。

(赤ちゃんがいるのね。羨ましいわ)

 形だけの夫婦だった時は思いもしなかったが、アドルディオンと心を通わせている今は愛する人の子供が欲しいと思うようになった。

 昼間だというのに夫の艶めいた瞳と夫婦の寝室が勝手に頭に浮かんできて、慌てて首を横に振る。

(顔が熱い。私ったらなにを考えているのよ。こういうのは自然に。急いで子供を授かろうとしなくてもいいじゃない。それにアドは今、忙しいのよ)

 王太子襲撃事件の調査が終了し、二か月ほど前にハイゼン公爵とケドラー辺境伯の裁判が始まった。

 まだ結審しておらず、いつ裁判が終わるのかクララにはわからない。

 刑が確定しなければ襲撃事件が完全に解決したとは言えず、それまで夫は忙しいはずだ。

 夜更けにそっと彼がベッドに入る気配を感じたり、朝になって隣で寝ているのに気づいたりといった夫婦の閨事情はまだ続くと思われた。

 子供について考えるのはよそうと足を進めたが、母娘も階段を上がってくるので会話を聞いてしまう。

「名前は誰がつけるの? あちらのお父様?」