まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 顔も広く、彼女が主催する催しにはいつも多くの貴族が参加していた。

 敵に回せば怖い存在なのだろう。

 先ほどクララを避けた貴族夫人が慌てて同じテーブルに戻ってくると、取り繕うような笑みを浮かべてクララにごまをすってきた。

『今日のお召し物も素敵ですわ。さすがは妃殿下、センスがよろしくていらっしゃいます。それにお美しくて聡明でいらっしゃって、妃殿下は私の憧れですの』

 その変わり身の早さに驚くとともに、叔母の力を思い知った。

 素性を知っても味方をしてくれる心の広さと頼もしさに、ますます叔母を好きになったのだ。

「到着いたしました」

「ありがとう。降ろしてください」

 御者の声かけに答えると、すぐに馬車の扉が開いた。

 ここは病院の正面ではなく、隣のブロックの一角だ。大型馬車なので邪魔になると思い、いつも少し離れた場所に止めてもらっている。

 侍女と護衛兵に囲まれて病院に着くと、三人にはロビーの待合室で待機していてもらう。

 お供を連れていたら王太子妃だと気づかれ、人を集めてしまうからだ。

 患者や医療者たちへの配慮である。

 ひとりで廊下を進み階段を上ろうとしたら、後ろから女性ふたりの会話が聞こえた。

「大きなお腹なんだから来なくていいと言ったのに。無理しないでよ」