まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 父親の拘束に焦ったハイゼン公爵の息子たちが王家への求心力を下げようと目論み、それに利用されたのはクララの出自だった。

 王太子妃は素性を偽っており、それを王太子が隠しているのは由々しき事態だ。国民を欺いたも同じだと声高に糾弾してきたのだ。

 王家に近しい貴族から数年がかりで少しずつ広めていく予定だったのに、一気に公にされてこれには肝を冷やした。

 しかしハイゼン公爵家の望み通りには進まなかった。

 当主が重罪を犯し爵位の剥奪も予想される中で、公爵家の味方につく貴族はいない。

 王太子妃の出自に関しては騒ぎ立てない方が賢明だと貴族たちは判断したようで、黙認を決め込み大事に至らなかったのだ。

 図らずも問題視されずに周知される結果となったのは、三か月ほど前のことである。

「ひとりでショッピングしてもつまらないのでクララ様と一緒がいいです。お見舞いの帰りにあの店に寄りましょう。クララ様の帽子を私に選ばせてください」

 張りきる侍女に頷いて、フフッと笑い声を漏らした。

 なぜ笑ったのかを説明しなくても、いつも一緒にいるエイミはわかってくれる。

「パトリシア様ではなくクララ様とお呼びするようになって、もう三か月も経ちますよ。まだそんなに嬉しいんですか?」