まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 これから母のお見舞いに行くのだが、もうメイド服での変装は必要なく、エイミと護衛兵ふたりを連れて王家の馬車に乗っての外出であった。

 メインストリートを進んでいると、隣に座るエイミが車窓を指さした。

「ショーウィンドウのあの帽子、素敵ですね」

「ほんと。ミモザ色で春にぴったり。エイミに似合いそう。私が母に会っている間にショッピングしてきて」

 王太子妃として身の回りを整えるための自由なお金はもらっている。

 財布の管理は侍女の役目で今もエイミが持っているはずだ。

 そこから帽子代を払ってと伝えると、首を横に振られた。

「クララ様に似合うと思って言ったんです。私は大人ぶりたい年頃なので、もう少し枯れた色がいいです」

 言い方がおかしくて笑い、同時に本名で呼ばれる喜びをひしひしと味わっていた。

 思い出しているのは半年ほど前の、王太子暗殺未遂事件後のことだ。

 村人の協力で視察隊は全員無事に親王派貴族領の港まで逃げおおせた。

 アドルディオンが船中でガスパロに約束した通り、早期にケドラー辺境伯とハイゼン公爵の身柄が拘束され、辺境伯領は中央政府の管理下に置かれている。

 領民に課せられていた高額な納税額も引き下げられ、彼らの暮らしは以前よりずっと楽になったことだろう。

 村人の笑顔が浮かぶようで嬉しく思っていた。

 事件後の大きな変化はクララにもあった。