まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

「ああ。傭兵とは戦わねばならないだろうが、一気に攻勢をかけて早期に降伏させる。その後はこの地の平和を守り、領民が安心して穏やかに暮らせるよう約束しよう」

「助けたつもりでいたが、俺らは窮地を救われたってことか。王太子殿下があんたでよかった。ありがとよ」

 言い慣れない様子で照れくさそうにお礼を述べたガスパロの視線がクララに向いた。

 よく叱られていた子供の頃のように、つい身構えてしまうと、ガスパロの目が優しく細められた。

「殿下に頼みついでに、もうひとつ。どうかクララをずっと大事にしてくんな。この子は苦労人だ。小さな体で魚の入った重たいバケツを運んでたんだよ。それでも弱音も恨み言も吐かず、いつも笑ってんだ。俺らはみんなクララが好きで、家族みたいに思ってる。働き者の娘には幸せになってもらいてぇ」

「ガスパロさん……!」

 エバンズ一家にゼフリーと神父、ブドウ農園主の夫婦や漁港で働くみんな、今までお世話になった村人の顔が次々と思い出され、貧しくても村人たちに可愛がられてきたのだと喜びを噛みしめる。

 あふれそうな涙はアドルディオンが人差し指で拭ってくれた。

「怖い思いをさせてすまなかったが、サンターニュ村に来たのを後悔してはいない。君をより深く知ることができたからだ。皆に愛されるクララを誇りに思う」

「アド……」

 嬉しい言葉と頬に触れる大きな手に鼓動が高鳴った。