まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 主君を守れた安堵感からか国軍大将は饒舌で、武骨なガスパロとのおかしな会話に護衛兵ふたりが笑うのをこらえていた。

 潮風に髪をなびかせるクララはアドルディオンと並び、見えなくなった故郷の方を静かに見ていた。

(村のみんなはどうなるのだろう。私が帰郷したことで迷惑をかけてしまった)

 炭焼き小屋のゼフリーに教会の神父、漁師たち。クララが会えなかった村人の家でも匿っていないか捜索されたと思われ、申し訳なさに胸が痛い。

 特に傭兵の制止を振り切って出航したガスパロは脱出に協力したとみなされ、村に戻れば辺境伯から処罰を受ける恐れもある。

「ガスパロさんは村に戻るの?」

 眉尻を下げて問いかければ、一拍の沈黙の後に投げやりな返事をされる。

「戻らないわけにいかねぇ。母ちゃんとガキどもがいるからな。後のことは知らん。なるようにしかならねぇだろ」

「巻き込んでごめんなさい……」

 風に消え入りそうな声で謝れば、船の縁を掴む手に夫の手がかぶさった。

「不安に思わなくていい。脱出に協力してくれた村民に危害が及ばないよう、隣接領に入港次第、早馬を出して王都の兵をこちらに早急に向かわせる。ケドラー辺境伯とハイゼン公爵の身柄を拘束するよう命じ、この地は当分の間、中央政府の管理下におく」

(それならガスパロさんや村のみんながお咎めを受ける心配ないわ!)