まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

 過去を含め、クララはガスパロの優しさに感謝した。

「ガスパロさん、食事までありがとう」

「作ったのは母ちゃんだ。お代わりもあるってよ。温かいうちに食え」

 床に座っての食事に文句を言う者はいない。

「美味しい」

 濃厚な旨味が口いっぱいに広がり、久しぶりの故郷の味に心まで温まる。

 ガスパロは部屋を出ていかずそばにしゃがんでおり、国軍大将が声を潜めて問いかける。

「出航は夜明け前と言っていたが、早められないのか? 夜の闇に紛れて船を出した方が安全に思えるのだが」

「バカ言うな。村に灯台はねぇ。真夜中に船を出せば岩礁にぶつかるかもしれん。この辺りの海岸線は入り組んで、海底もでこぼこなんだよ。海をなめるな。それにいつもと違う時間に船を出して万が一見つかったら、なんて言い訳する? 海については俺らに任せて、素人は黙って飯を食え」

(ガスパロさん、言い方が……)

 国軍大将は普段命令する立場にいるせいかプライドが高いようだ。バカにされたと思い目をつり上げている。

 ガスパロはいつもこういう口調で決して悪気はないのだが、どう説明していいのかとクララは焦る。

 するとアドルディオンが落ち着いた声で口を挟んだ。

「出航時間についてはあなたに任せる。此度の協力には感謝しかない。奥方にもお礼を伝えてくれないか。心温まる美味しいスープをありがとうと」