まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

「神父様……」

 鼻の奥がツンとして、涙をこらえる。

「礼拝で子供らにパンや菓子を配る時、数が足りないことがございました。すると自分も腹を空かせているはずなのに、この子は他の子供を優先するのです。教会の手伝いもいつも率先してやってくれました。クララは優しい子です。王太子殿下だからではなく、クララを妻に選ばれた方だから、私はあなた様も助けます」

 言い終えて温かな眼差しを向けてくれる神父に、アドルディオンは今度こそ完全に疑いを解いたようだ。

「神職と領主は距離が近い。経験上、疑う癖がついているのです。失礼な発言をお許しください」

「わかっております。あなた様の並々ならぬ苦難多き人生からくる懸念だと。では、しばしお待ちください。必ず船をご用意いたします」

 一礼して神父が出ていき、クララは頬を膨らませて夫と向かい合う。

「慎重になるのはわかるけど、神父様は大丈夫よ。村の人もきっと力を貸してくれる。ここで生まれ育った私が言うんだから信じて」

「すまなかった。正直に言うとゼフリーさんも疑っていた。老爺がどうやって助けるのかという意味でだが」

「ゼフリーさんは誰よりあの森を知っているわ。頼りになる人よ。信じていなかったなんて」

「クララを信じて行動しただけで村人は疑っていた。今後は信じる努力をしよう。俺はまた君から大切な教えを授かったな。九年前と同じだ」