まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!

「神父様……」

 村を出ていっても変わらず心配してくれていたと知り、感謝が込み上げる。

 母の回復や村を出てからなにがあったのかを詳しく報告したいところだが、今は時間がない。

「地下に視察隊の皆さんがいます。辺境伯とハイゼン公爵が手を組んで、王太子殿下を――私の夫を亡き者にしようとしているんです。道は封鎖されているので村を出るには船が必要です。お願いです、力を貸してください」

「領主様の傭兵が大勢でやってきたとも聞いたが、そうだったのか。事情はわかった。力になろう」

 クララが声をかけると全員がすぐにはしごを上ってきた。

 礼拝堂のドアにカギをかけた神父が、アドルディオンの前に立って頭を下げる。

「このような辺鄙な村へようこそお越しくださいました。と言っている場合ではございませんな。船をご所望と聞きました。私から漁師に頼みましょう」

 間に神父が入ってくれるなら、断る漁師はいないだろう。

 漁港で働いていたので漁師たちとは知り合いだが、中には気性の荒い者もいた。

 不漁の時は不機嫌で、うっかり前を横切り『ガキがうろちょろすんな』と怒られたこともあった。

 村を出ていったよそ者なのだから迷惑をかけるなと言われる可能性も頭をよぎったので、神父の協力は心強い。